前橋地裁第1号法廷。国定徹の第2回目の公判が行われていた。
証人として、取調官の轟志朗が山中秀行の尋問を受けている。
「轟さん、あなたはこのお仕事をされて何年になりますか?」
「え~っと、27年です」
「ずいぶんと長くやられていらっしゃる」
「えぇまあ」
「それでは、今までずいぶんと、いろいろな事件に関わってきましたね?」
「それはまぁ、そうでしょうね」
「大ベテランだ」
「まあ、そうですね」
「でも、それだけ長くやっていると、今まで少し段取りを間違った取り調べなどもありましたよね?」
「異議あり!弁護人の趣旨が汲み取れません」
検事が言った。
「異議を認めます」
裁判長が答えた。
「それでは質問を変えます・・・あなたは被告人を取り調べた時、被告人の発言をきちんと録取しましたか?」
「ええ、もちろん」
「最初から?」
「はい」
「それはおかしいですね・・・被告人は取り調べの初めから、無罪を主張していた。しかし、取調官には全く取り合ってもらえなかった、と言っているのですが、いかがですか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。ちょっと喋り始めるのが遅かったのは事実ですが、被告人は素直によく話してくれましたよ、自分からね」
「被告人は強圧的な取り調べを何時間にもわたって受けたため、精神的に参ってしまい、その結果やってもいないのにやったと言ってしまった、と言っているのですが、いかがですか?」
「そんな強圧的なことなんてのはしませんよ」
「被告人は、若い取調官が机を灰皿で威嚇的に叩いたり、机や椅子を蹴りあげたり、ひどい時は取調官に胸倉を掴まれて振り回された、と言っているのですが、これに関してはいかがですか?」
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