Ⅲ 弁護士の直感+刑事の嗅覚 VS犯人の姦計 5-4

子供たちが部屋に引き揚げて、山中秀行はダイニングテーブルに義母の恵子と向かい合った。

「それにしても子どもたち、立派に育っているわね」

恵子がしみじみと山中に言う。

「そうですね。親はなくとも子は育つってことですかね」

「ううん、秀行さんは立派にやっているわよ・・・ごめんなさいね、容子がいればあなたもね・・・」

「お義母さん、よしてくださいよ、誰のせいでもないんですから、容子だって子どもたちの姿を見てよろこんでますよ。うちはみんな幸せですから」

「そう言ってもらえるとね、ありがたいわ・・・それにしても、亜沙子はどんどん容子に似てきて。本当に驚くわ、容子の若い時にそっくり、喋り方まで」

「そうですか?そういわれてみると亜沙子はどことなくお義母さんにも似てますよ」

「そう?だからかしらねぇ、加代が亜沙子にあーちゃん、あーちゃんって言っているのが、子どもが母親に、お母さん、お母さん言っているように聞こえてね」

「はぁ、そうですかぁ」

「あれね、わたしらの田舎だと、子どもが母親のことを『あーちゃん』って呼ぶことがあるのよ」

「へ~、そうなんですか?」

「ええ、だからね、わたしの子ども時代と無意識に重ねているのかなぁ、なんて思ったりしたのよ」

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