Ⅰ 疑惑、そして、自白 5-1

3月7日。太田警察署、第一取調室。取り調べ4日目。

連日の取り調べによりげっそりと生気のない表情になった国定徹が、徐々に自白を始めていた。

「で、事件の3日前、2月27日午後3時頃、高山さん方を物色、警報機や警備会社との契約の有無を確認。押し入るのに支障をきたすものは特に見受けられなかった。これなら十分にいけそうだと感じたので3月3日の未明に押し入ることに決めた。間違えないな?」

「・・・はい」

国定は諦めにも似た表情で渡辺の質問に答えた。

「事件当日午前2時、近くの公園に車を止め、付近が寝静まっているのを確認し、高山さん方の裏口のドアの鍵を、持参したピッキング用具で開けてから中に入った」

「はい」

「うん、いいぞ。そして、室内を物色中に起きてきた高山さん・・・」

「違うんです・・・」

「あ?何が違うんだよ、え?なんでね、お前さんはね、え?さっきまでいい感じだったのをぉ」

「違うんです・・・いないはずだったんです」

「あ?何だよ、いないはずってのはよ?いないはずだったって、そりゃお前さんの思い込みだろ?え?いるんだから、実際いたんだからよ」

「・・・いないんですぅ・・・」

「・・・」

渡辺は轟の方を見て呆れた顔で頭を左右に振った。

「轟さん、どうします?」

「いやな、誰だってよぉ、少しはな、混乱もするよ、なあ、国定よ、連日の取り調べでな、そりゃ少しはこんなんにもなるよ、俺は、わかるよ、うん、お前の気持ち、わかるよぉ」

「・・・」

国定は薄れゆく自我で、うそをつけ、と思った。

「だけどなぁ国定よぉ、こればっかりは真実なんだよな、高山さん夫婦がいて、しかも殺されてたんだよな、これは紛れもない事実なんだよな。なあ、国定、え?お前さんはよ、思い違いしているんだよ、え?そうだろ?」

思い違い?そんなふうに言われると国定自身もそんなものなのかな、とも思い始めてきた。

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