前橋拘置所へ急いだ萩原と新島は、初めて国定徹とガラス越しに対峙した。
萩原慎太郎の胸のうちで、何かが動きだした実感が湧き上がっていた。
「国定、お前は、そもそも昼間の空き巣が専門だったんだよな?」
ガラス越しに、強い口調で萩原が国定に訊く。
「あ、はい・・・」
国定は消え入りそうな声で答えた。
「今まで夜入ったことはないのか?」
「いえ、そんなことは、何度かは、あ、はい、ありますけど・・・」
「そ、そうかぁ・・・」
夜も入るか、萩原慎太郎は、見込み違いだったのかもしれないと感じた。
しかし、まだ何かが萩原の中でくすぶっていた。
「あのう、でも、刑事さん、夜っていってもですね。そんな物騒なことはしませんよ。俺は人を殺してまで、なんぼなんでもそこまでしてやりませんよ」
「ふん・・・」
「本当ですよ、夜に入るのは、そこんちが旅行に行ってる時だとかに入るんですから、はい」
「そんなことがわかるのかぁ?」と新島が国定に尋ねた。
「えぇ、そりゃわかりますって・・・まあ、なんとなくですけどね」
「・・・ん?・・・それは本当か!」
萩原が声を荒げた。
「え?何がです?」
国定が驚いて訊き返す。
「家に人がいないのがわかっているから、入るっていうのは本当なのか?」
「本当ですよ。だって人がいないのがわかっている家に入って盗みをすりゃ、その方がいいでしょうが」
「まあ、それはそうだなぁ」と新島が苦笑いしながらうなずいた。
「ん?・・・」
萩原慎太郎の疼きが、思考回路を突き抜けた。
「だったら、国定!だったらどうして、あの夜、高山さんちに入ったんだ、あの夫婦がいるというのに、なんで押し入ったんだ!」
萩原は早口でまくし立てた。
「違うんだよ、だから、俺は言ったんだよ。本当はいないはずだったんだよ」
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