Ⅳ 無知の暴露/真実の暴露 1-3

「質問を変えます。それから証人は被告人に凶器について尋ねていますね?」

「はい」

「それは、被告人が殺人を認めた後ですね?」

「はい、そうです」

「この時、被告人からおかしな印象を受けませんでしたか?例えば、なぜこんなことをもたもたと・・・というようなもどかしさのような」

「いえ、覚えていません」

「おかしいですね・・・録取では、この辺りがどうもすっきりといってないんですよね・・・被告人が殺人の罪を認めたにも関わらず、その凶器をいつ、どこで買ったのかを言い淀んでいる。なぜだと思われましたか?」

「まあ、被告人は忘れっぽい奴だったんで、そのせいかと」

「忘れっぽい?はて、それはどうしてそう思われたのですか?」

「どうして、って言われても・・・」

「異議あり。本件とは関連はありません」

「異議を却下します。証人はその根拠を答えるように」

「はい。具体的になんでって言われても、まあ、強いて言えば、時間はかかったけど自分が殺人の罪を犯したということを思い出したので、という理由ですかね」

「それでは具体的にはないと?」

「そんなふうに言われると、ええ、具体的にはないですけど・・・」

「わかりました。そこで、被告人は忘れているだけだから、思い出すだろうと」

「ええ、そうですね」

「ちなみに証人は、凶器の包丁がいつ、どこで買われたのかはご存知でしたか?」

「ええ、まあ、証拠品としてレシートがありましたから」

「そうですか・・・被告人はこう言っています。包丁など自分は買った覚えはないので場所も日にちもわからないと何度も言っていたところ、証人に、ほらあそこだよ、お前んちの近くのほら、というふうに言われたと、まるでヒントをくれるようだったと。

そこで被告人は、もし自分が自分の家の近くで包丁を買うとしたら『カインズ』かな?と思いカンでそう言ったと、日にちも同様に答えたと、こう言っているのですが、いかが思われますか?」

0 件のコメント:

コメントを投稿